左上の親知らずを抜いた

2018.09.28 // 創作,日記

左上の親知らずを抜いた。

患部の周りを洗浄し、薬を染み込ませたガーゼをあて麻酔をかける。
「力をかけていきますね〜」
頭蓋骨の中に直接ミリ…ゴリ…と音が響く。
一度うがいをし、また引っ張ってもらった。
ミキ…ミシミシ
歯は簡単に抜けたようだった。
骨から歯を引き抜く不気味な音。
相当に嫌な音だが聞いたことのない新鮮な音がだった。
痛みは無く、唇の感覚もない。
抜けた歯を見ると、上の部分から黒や茶色に醜く変色していた。
正直なことを思えば、こんなものが口の中に何年もあったなんて汚ならしい。
抜いてせいせいした。

抜いた歯は持ち帰らせてもらった。
先生いわく、「しっかり洗って乾燥させて時々アルコールで拭く。でもそんなにもたせる物じゃないよ」とのこと。
むむ、もっとしっかり処置して保管する方法があるはずだ。
早速ネットで調べて腐らないよう処理する。
まず血や肉を水で丁寧に洗い落とす。
歯垢?のようなものは硬く爪ではビクともしない。
肉のようなものは根にまとわりつき身体の一部であったことを強く主張する。
1番気になるのは虫歯で腐り始めている部分だ。
爪で削ると、岩を削るようにこそげていく。
本当、ボロボロの状態だったんだなあ…

キリがないので、いらないジャムの空き瓶にキッチンハイターの原液を入れ歯を落とす。
カラカラと高い音が鳴る。
30分ほど浸けて放置。
液に変化は見られなかったが、歯は血や肉片、そして腐食した大部分が溶け幾分かスッキリした。
手にかからないよう液を洗い流し、手にとって更に観察する。
虫歯が複雑に、内部に向かって侵食していくのがわかる。
幸い、神経までは蝕まれていないようだった。
これが隣の歯にも感染ることを思うと、まだ早めに決断できたことに嬉しくなった。
軽く水気をとり、さらにアルコールに浸ける。
こうすると歯が白くなり、鑑賞用(笑)に見栄えがよくなるとのこと。
入れてすぐに黄ばみが薄くなるのがわかった。
ハイターのように溶ける心配はないのでこのまま2〜3日放置。
すると、変色した部分の一部が浮き上がっている。
洗い流すと、さらに一層虫歯の部分が削れる。
つまようじを持ち出しほじくる。
歯の形状に沿ってなぞると黒いカスが出てくる。
不快感が凄まじいが、ここまで処置した今となっては全くの無臭。
水洗いしてペーパーで水気を拭き取り天日干し。
虫歯部分はかなり削られていったものの、歯の上部に染み込み不気味な紋様を遺している。
それが漂白された歯の表面とコントラストを作り、非常に悪趣味だ。
引き抜くための器具で出来た小キズもそれなりに目立ち、自然に抜けたものではないことを強く主張する。
干しきったところで様子を見るが、あの虫歯部分の脆さを考慮すると空気中での保管は腐る可能性があるかもしれない。
資料としては手にとれた方が見やすいが、小瓶にエタノールを満たしその中で保存するのが良いだろう。
不気味なコレクションがまた増えてしまった。

本体である私の身体の方はというと、抜いたその瞬間からその側の顔は明らかに小さくなった。
親知らずが外側を向いて無意味な生え方をしていたせいで、頰を内側から押していたようだった。
口の中の無意識に感じていた圧も緩和され、横になった時に顎が押される感覚も軽くなった。
いいことづくめだった。
抜いた傷痕にあてた脱脂綿が大量の血に染まっていくのに気分が高揚した。

ただ、一つすごく気になることがある。
抜いた側は明らかに輪郭がシャープになったが、これでは反対側が取り残されアンバランスだ。

抜く感触、抜いた歯の観察・処置、口腔内の環境の向上、面白いことだらけだった。これはクセになりそうである。
当面の目標は、他の軽い虫歯を治療しつつ反対側の親知らずを抜くことだ。ゆくゆくは大物の下の親知らず2本も抜きたい。

カラカラと音のする小瓶が増えるのが、また楽しみである。


甚だ夜に近影

“可愛いからホラーまで”

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