紙魚、蝉
2018.09.22 // 創作,日記
今日、紙魚を見た。会社で。
昔からよく埃まみれの本を漁ってきたが、実物を見たのは生まれて初めてだった。
またの名をシルバーフィッシュ。その響きに恥じない美しい銀色の肢体、清水を泳ぐ魚のような動き。感動のあまり声が出た。
しかし問題なのは、私は印刷会社にいるということだ。
紙を扱う会社にとって彼らはゴキよりヤバい存在なので、紙魚がどんな虫でどうヤバくてどう対策したらいいか上司に報告した。ヤバい事は伝わったが誰も紙魚を知らないらしい。そもそも一瞬で走り抜けた小さい虫を何の種か特定するような奴もヤバい奴なのでは…というのは考えない。
帰り道には蝉の幼虫を見た。風に飛ばされたのか道路の上で転がりもがいていた。
ハッと思って優しくつまんでなるべく風が来なさそうな奥まった木の幹にしがみつかせてあげたが、黒っぽくなってたのでダメかもしれない。
紙魚の殲滅を企てる私、蝉の幼虫を救ったつもりでいる私、これは完全にエゴだ。