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甚だ夜に 2019.02.28

ジョージ・オーウェル 動物農場 レビュー

「一九八四年」と並ぶ名作。
農場主を追い出した動物達は、賢いブタを筆頭に動物のための農場の運営につとめる。
平等、人間よりも素晴らしい仕組みを求めるが主導権を得たブタが暴走していき…

動物達が会話し、寓話的な書かれ方をしているが内容はかなり過激だ。
最初こそ素晴らしい世界に見えた。
主導権を握った者がどのように事実を改竄し自分に都合の良いルールを定めていくかが段階を追って描かれており、かなりリアルである。
記録を改竄することにより、事実さえも歪め、改竄したことさえなかったことになる。
このように一九八四年に通じる部分が多く、だがこちらは権力が腐敗していく過程がメイン。
あちらは支配下に置かれた者が管理され、もがこうとするも逃れられない世界がメイン。

常に正しい指導者ナポレオン、狡猾なスパイ スノーボール、弁の立つスクウィーラー…。
ブタであるのが露骨な皮肉である。

動物さんたちのおかげか、とても読みやすい。
一九八四年よりこちらを先に読んでおくと入りやすいかも。どっちも面白い。

後ろに掲載されている、出版するにあたってのいざこざがまさに、という感じで苦笑してしまう。

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甚だ夜に 2019.02.21

居場所

がんばってがんばって上り詰めた先にはすでに誰かが座っていて、それは決定事項だ。自分が座ることはできないのだ。
それでも、着ぶくれた装備を纏って他の上を目指す。キリがないのはわかっている。
歪に膨れた自分を、いつか誰か特別な椅子に座らせてくれるんじゃないか。
そんな期待で前へ進む。
いつしか、私は歪に膨れた中から用途に応じた道具を取り出し、椅子を自分で作るようになった。

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甚だ夜に 2019.02.14

好きになった子がいた。

好きになった子がいた。
会社の後輩だった。
小柄でニコニコしていて、僕によく懐いてくれた。
漫画が好きで、少し偏った趣味で興味が湧いた。
仕事を後回しにするほど、雑談をした。

自然に、彼女とデートするようになった。
好き嫌いが激しいようだが、好物はとても美味しそうに食べる。
ニコニコ幸せそうに食べる顔を見ると僕も幸せな気持ちになった。

結婚を前提に、同棲を始めた。
彼女は料理が上手だった。
とても幸せだったが、変化が現れた。
彼女は嫉妬深く、事務の女性と雑談しただけですごく怒っていた。
果てには会社の飲み会に行くことにさえ不快な態度を示し始めた。
異常だ。束縛が過ぎる。
僕は、華奢な彼女の中に狂気を感じるようになった。

そうしたことで度々ケンカするようになった。
二人とも、些細なことにイライラしていた。
ケンカを重ねるたび、愛を通り越した憎しみを感じる瞬間が増えていった。

その日も口ゲンカから始まった。
彼女は妙に弁が立つ。気違いのくせに。
僕は口では勝てない。
生意気な彼女の首に、両手をかけた。

白い喉元を僕の手が絞める。
彼女は僕の手を振り解こうとしない。
どうして抵抗しないんだ。
柔らかい肌に親指が深く、深く食い込んでいく。
顔が真っ赤になり、涙がポロポロ溢れている。
がはっ、ごぽっ、と普段の彼女からは想像もつかない醜い音が口から出ている。
ただ、充血した目は真っ直ぐ僕の顔を見ている。
怖い。
より力を込めた。
震えているのは僕の手か、それとも彼女の体なのか。
ハッとして手を放した。
どのくらいの時間首を絞めていたのだろう。
彼女は力なくうつ伏せに崩れていった。
僕はへたりこみ、彼女を見つめた。
床には失禁の水溜りが出来ていた。
ピクリとも動かない。
もう怖くない。
でも茫然として、僕は彼女だったそれを眺め続けた…

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甚だ夜に 2019.02.01

完全自殺マニュアル新旧比較

一斉を風靡したご本、完全自殺マニュアル。
14版と110刷の比較をした。
といってもざっと見たところ、変更点は奥付と帯の部分だけだった。

表紙はかっちりしたシュリンク包装になり、帯が二重になった。
社会に衝撃を与えただけあって、贅沢な仕様である。

白い帯をめくると、全く同じ帯。

奥付は版数と発行所の住所と作者略歴が変更。

薬の成分の配合量、致死量など数字の変更があるかも、と思ったけどそんなことはなかった。

しかし、このロングセラーぶりはすごい。
どちらもビブリオマニアさんで購入した物だが、未だに新しく刷っているとは…
(新本を入手したのは2018年)
今も自殺者にとってバイブルのような感じで、
この本の内容を参考に自殺をする人もいるらしい。
世の中に変化はありつつも、この本の訴えたいことは不変だからだろうか。

古い方は、見返しに「¥100」と鉛筆で書き込まれている。
私の世代ではわからないが、流行った頃にはBOOKOFFでは100円で投げ売りされていたらしい。
処分された数も相当なのか、今はなかなか手に入れにくい本になった。

今やネットで死に方は簡単に探せるが、本という形であると安心感があるのかもしれない。

※追記 2019年2月2日
やすはら様から、版と刷では意味が違い、14版は14刷の誤植ではないかというご指摘を頂きました。
(内容に変化のない追加生産分が刷になる)
新しい110刷の方に14版の改定表記がない所をみると、そうかもしれません。
版と刷の違いについて調べてみましたが、基本的には上記のようなルールだそうです。
ただ、曖昧に使われていることも多いようで…

他の年の本も入手して調べてみたいところですね。
こういったことはとても勉強になります、やすはら様ありがとうございます。

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甚だ夜に 2019.01.25

死にまつわる書籍3冊まとめレビュー

ビブリオマニアで入手した死にまつわるご本。

完全自殺マニュアルと自殺のコストは自死に対して淡々と豊富なデータ、解説を載せている。
どちらも淡白な図と表が記載されており、死体写真などもないので安心して読める。
完全自殺マニュアルについては有害図書として指定されたりと有名な本だが、今の時代古本ではなかなか入手ができなかった。
(まだ開封していないが、シュリンク包装済みの新本が入手できたのでまた今度改定されている部分があるかどうか検証する。)
いまだにこれをバイブルとして自殺する人もいるようで、樹海の死体マニアにとっては、穴場を探すバイブルとしても役立てているとのこと。
(なんとも皮肉な…)

自殺のコストは完全自殺マニュアルほど有名ではないが、こちらも名著である。
自死についての難しさを思い知らされる。

特殊清掃は、主に変死した現場の清掃をしながら特掃隊長が人の最期について考えを巡らす内容。
実は「特殊清掃 戦う男たち」でブログをやってらっしゃるので本を買わずとも全文読める。
著者いわくギャラはなし、でもプライドが少しはあるから売れて欲しい…とぼやいておられた。
死んだあと、人間がどうなるかが克明に書いてあり今後を考えるとかなり勉強になる。
お葬式も、腐敗の過程も、である。
特殊な趣味などなくても、色んな方に読んでもらいたい一冊。
良書だが、知名度がなく知っている人が少ない。すごくもったいない。
ブログも2019年現在もゆっくり更新されておられるので、気なる方はぜひ読んで欲しい。

三冊とも、死を語ることで生きることに目を向けさせてくれる良本。

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甚だ夜に 2019.01.18

女の子と怪物

死にたがってふらふらと縄を持って森に入る女の子、そこで出逢う醜い怪物。
恐怖を感じて逃げ出す女の子。追いかける怪物。躓いて頭を打ち動かない女の子。怪物の手には花。
実は、たくさんの人の自殺を見てきた怪物は、女の子に生きて欲しくて花を渡そうとしたのでした。
おしまい。

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甚だ夜に 2019.01.04

閉塞

雨の中歩く私
ぎゅうぎゅうの電車内 座る私 狭い…
学校はじまる キンコンカンコン
授業が始まる 私だけわからない みんな怪物みたい
学校終わる キンコンカンコン 
今日もやっと終わった
ため息をつきながら駅まで歩く
その途中、映画のポスターを見つける
ギレルモ映画
ふらりと映画館にはいる
美しい怪物映画だ
夢中になり鑑賞する 瞳にはヒロインが映る
すごい
映画の怪物だけが、人間に見えた。

電車内でうなだれる私
さっきの 映画すごかったな
美しさ、グロテスク、暗喩
一生かかっても、わたしにはあんなすごい物は作れないしたどり着けないだろう
電車を降り雨の帰り道
なんでかな
死にたい…

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甚だ夜に 2019.01.01

映画『グレイテスト・ショーマン』(2017)レビュー

貧しい家庭で育った主人公バーナムが、アイデアで活躍していく半生を描くミュージカル映画。

明るくフリークスが登場してきます。
とはいえ、本物は小人、大きな身長の男性、黒人だけっぽいです。
(単純にダンスシーンが多いから、かも知れませんが実際の方を使いにくくなったのでしょうか…)
フリークス、と表現されていますが「社会からはみ出した者達」という側面が強く、観ている側は共感します。

5分に1回ほど曲が入り、どの曲も素晴らしいです。
冒頭のサーカスのシーンでグッとこの世界の中に引き込まれていきます。
美しい色彩に、計算されたライティング、華やかなダンス。
バーナムの口のうまさ、手腕、思いきりの良さは観ていてとても気持ちがよくなります。
問題が起きながらも、クライマックスには主人公を応援せずにはいられない。走る映画はいい映画。
伏線もなかなか丁寧に盛り込まれています。

「フリークス」というデリケートなテーマを、嫌味も媚びもなく上手に取り入れています。
夢に向かって突き進む、世界が回り始める喜びを見せてくれる名作でした。

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甚だ夜に 2018.12.28

家族

実家に帰省すると、
家族は私の知らないアーティストが好きで
私の知らない番組を楽しみ
私の知らない歌をうたう

私の好きな映画を 家族は知らない
私の好きな歌を 家族は知らない

知らない世界に住んでいるような
近くて遠い 家族は海

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甚だ夜に 2018.12.21

大江健三郎「死者の奢り・飼育」 レビュー

大江健三郎「死者の奢り・飼育」
死体洗いのアルバイトの都市伝説の元ネタと言われている小説。
本編ではホルマリン漬けの死体を違うプールへ運ぶ職務内容。
粘度をもって纏わりつく文体、死者・自己との対話が克明に描かれ実体験だと錯覚するほど生々しい。

ホルマリンは気化しやすいのでこんな管理の仕方はまず無理!と知っていても有りそう…と思ってしまうリアリティ。
バイトとしてやってるのにお給金もぐだぐたにされながら働くはめになる、そこも胸糞悪くてリアル。
人が死体になり、それが「もの」として扱われていく所もぐるぐる考えさせられる…

性・差別について度々出てくるのでげっそり。
短編集だが、どれも後味悪くて最高である。